米運輸保安庁(TSA)は1日当たり200万人を超える乗客をボディスキャナーとX線検査機で調べていた。ところが、今週はじめの検査数はわずか13万人で、2〜3週間前にはこれよりさらに少なかった。
米国の航空各社は好調だった2019年を経て、20年に入ってからも1月から高収益を記録するなど快調な滑り出しを見せていた。ユナイテッド航空はパイロットの需要が高まるとみて、航空学校を2月初旬に買収していたほどだ。またデルタ航空は、2月14日のヴァレンタインデーに、総額16億ドル(約1,717億円)に上る記録的な額のボーナスを社員に支給していた。
ところが3月に入ると、大打撃に見舞われた。航空会社はキャパシティの半分かそれ以上に当たる2,400機の運航を取りやめることになったのだ。航空会社は1カ月に100億ドル(約1兆700億円)から120億ドル(約1兆2,800億円)の損失を出しているという。
「これが人間だったら、出血多量で死んでいるでしょうね」
航空会社は航空機のリース代やローンの支払い、オフィスやメンテナンス施設の賃料、企業債務の支払いといったコストを簡単には削減できない。
米国では「コロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)」が施行され、航空業界の支援に580億ドル(6兆2,100億円)が充てられた。
ただし、政府の支援を受ける航空会社にとって、恐らく最大の重荷となる要件がある。それは便数を削減し始めるよりずっと前の3月1日時点に運航していた全都市へ、旅客機を飛ばし続けなければばならないという点だ。
いまや乗客数は全国平均で20席につき1人程度だという。
「こうして航空会社は、今年の後半に経済が回復してきたときに必要になる資金を“燃やして”しまっているのです」
フライトで利益を上げるには、座席数の少なくとも85パーセントが埋まっている必要があるのだと、ボイドは言う。「現在のような搭乗率では、本当に飛ぶべきではないのです」