「バタフライ効果」という言葉がある。南米の昆虫のわずかな羽ばたきが北米でトルネードを引き起こすといったように、ささいなきっかけが雪だるま式に一連の大きな結果を生むことを指す概念で、少なくとも数学のカオス理論で用いられている。
グリーンランドの氷床の表面で発見したというそれは氷河の融解水に生息する光合成微生物シアノバクテリア(藍色細菌)である。気候温暖化と雲量の減少により、このバクテリアがグリーンランドの氷床の表面で増え続けているというのだ。
この種のバクテリアは、氷河の上の堆積物(その大半は石英でできている)と接触することで凝集し、本来の大きさの91倍もの球形になる。そして氷河の融解水で流されるのではなく、氷河の上にできた流れ、つまり氷河川に堆積し始める。
「この堆積物は漆黒なので、多くの太陽光を吸収します」
グリーンランドの氷床は65万平方マイル(約168万3,500平方キロメートル)に及ぶ。米航空宇宙局(NASA)の試算によると、グリーンランドの氷床がすべて融解すると、世界の海面は24フィート(約7.3m)上昇するという。