欧州と米国の理論モデル研究者たちによって2011年に発表されたある研究によると、H1N1ウイルスに対する渡航禁止令によって、メキシコに行き来する飛行機移動は40パーセント減少した(そして経済面で莫大な影響をもたらした)。ところが、インフルエンザの拡大はまったく抑えられていなかったという。
英国では14年に、インフルエンザのアウトブレイクに対する渡航制限の効果について、23件の異なる研究結果に基づいてメタ解析が実施された。この解析によると、感染拡大の速度を遅らせる効果は、わずか3パーセント未満だったと結論づけられている。その効果は、アウトブレイク後期になってから制限がかけられた場合や、大都市で実施された場合には、さらに低かったという。
また、14年に西アフリカで起きたエボラ出血熱のアウトブレイクを調査した国際研究チームも、ほぼ同じことを見出した。渡航制限に何らかの効果があったとしても、それは他国への感染拡大をわずか数週間遅らせたにすぎないものだったという。