10年近くにわたり、グーグルは中国の人権保護問題に関わる業務をロス・ラジュネスに一任していた。その役割の一環として、ラジュネスは検索結果の検閲をやめる計画を策定した。この表現の自由とデータプライバシーに対する支持によって、グーグルは称賛を集めた。グーグルでさまざまなエグゼクティブの職を歴任してきたラジュネスは、社内中の信頼を集め、業績評価では中国での業務のみならず、あらゆる面で絶賛された。

 状況に変化が生じたのは、2019年のことだ。かつてラジュネスが、そしてグーグル自身が誇っていた価値観から、会社が乖離してきているとラジュネスは感じるようになっていた。そこで彼は、会社の考え方を変えようと試みた。さらに、グーグルが中国での計画を明らかにしなかったことを批判する書簡に署名した従業員1400人に加わった。

 ラジュネスは目に見えるやり方で会社の経営陣と対立し、かなりの反感を買った。彼はある日、誤送信されたCCメールを受け取った。その文面は、彼が「多くの懸念を示している」ようだから、提示された問題ではなく彼自身を調査するようにと、人事部のディレクターが部下に指示したものだった。

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