それまで一度も選抜に入ったことがなかった佐藤亜美菜が、まさかの8位を獲得。多くのファンの涙を誘った。それはたとえるならばシンデレラストーリー。ここまでスポットが当たらなかった佐藤のこれからの活躍は約束されたも同然だった。
総選挙から約1週間後。千葉県某所で新曲『言い訳Maybe』のPV撮影が行われた。炎天下の下、自転車でレースをするメンバーたち。初めてのPV撮影参加となる佐藤亜美菜は胸を高鳴らせていた。
「ファンの皆さんの力で8位という順位をいただきました。だから一生懸命頑張ろうって」それから数週間後、収録スタジオにスタッフが『言い訳Maybe』のPVを持って現れた。その場所にいたメンバー全員で見ることになった。
佐
藤も「初めてのPV。どんな感じになっているんだろう」と、胸の高鳴りを抑えながら画面を見つめていた。
「PVの最初はドラマ仕立てだったんですけど、そこではほとんど映っていなくて、曲になっても全然出てこないんですよ。『あれ・・・私、どこ?』って。あ
れだけ一生懸命に投票してくれたファンの皆さんに申し訳なくて・・・。そのままみんなはアンダーガールズの『飛べないアゲハチョウ』のPVを観始めたんで
すけど・・・私、そこにいたら泣いちゃうって思って『お疲れさまです』って、部屋を出たんです」廊下を歩きながら、両目には涙が溜まってくる。惨めで悔しくて申し訳なくて・・・。そんな佐藤亜美菜を、後ろからひとつの足音が追いかけてきた。
「『待って!』って言われて、振り向いたら、たかみな(高橋みなみ)だったんです。『思っていること、あるでしょ』って。『それを我慢していたらイライラしちゃうし、溜め込んじゃダメだから』って、そのままトイレの個室に連れていかれたんです」
そこで鍵をかけて、高橋は言った。
「全部出さなきゃスッキリしないよ!泣いたっていいんだよ!」
高橋が佐藤の頭を抱き、自分の胸に押しあてる。その瞬間、佐藤の中で抑え込んでいたものがプチンと弾けた。