取材班が南米の奥地,秘境中の秘境とされる地をジープで通りかかると,寝そべって地面に耳をつけている老人の姿があった。
「あれが,今回取材にきた『大地と語る老人』に違いありません」
「ちょうどいい。すぐ撮影準備だ」

さっそく取材班は,カメラを組み立てるや,老人にマイクを向けた。
「ご老人、何か聞こえるのでしょうか?」
やせこけた老人は,目ヤニの奥に黒く鋭く輝く瞳で彼等を見つめると,こう答えた。
「車じゃ。青い車に男がひとり,女が二人。アメリカ人じゃろう。西へ向かっておる。ナンバーは・・・」

取材班はざわめいた。
「信じられない!地面の音でそれだけ分かるなんて」
「神秘だ!これぞ,文明と共に失われてしまった人間の神秘の力なのでしょうか」

老人は続けた。
「・・・が,わしを引いていきよった。早く警察と救急車を呼んでくれ」

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