なぜ人は足を組むのか、整形外科の市谷八幡クリニックの医学博士、古賀昭義院長に単刀直入に聞いた。 「体の重心を調整するためというのが主な理由です。人は座っているとき、脊椎とお尻の座骨でバランスを取りますが、ほとんどのイスは座る人の座高や足の長さ、お尻の大きさなどの様々な条件にぴったり合うよう作られていないため、バランスが崩れてしまいます。例えばイスが合わずに座りが浅く前かがみになると、脊椎の腰の部分は後ろ側に弓なりになって重心が後方にいくため、足を組むことで前方に重心をシフトさせて偏りを解消したくなります。ほかにも何かを片方の手に持つなどして上半身の姿勢が左右非対称になり、片方のお尻に重みが集中した場合、そのお尻側の足を組むことにより、均衡した状態に持っていこうとします」 実際に右足を上にして組んで試してみると、右のお尻が少し浮き、重心が左のお尻の方に移っているのを実感できた! ということは、積極的に足を組んでバランスを取った方がいいの? 「人は座っていると脊椎の一部分である腰椎の間の椎間板に、体重の4倍の圧力が加わります。これは立っているときの実に約1.4倍。この圧力を一部分に集中させないように重心のバランスを取っているのです。本当は足を組まなくても、人の脊椎は前から見たときに真っ直ぐ、横から見たときに前後に弓なりに曲がったS字形のときに最も安定し、圧力を脊椎や座骨など全体に分散させられるため、負担を軽くすることができます。座るときは両足を床に着け、お尻を後ろに引いて腰骨を前に、下腹に力を入れて肩の力を抜く、立腰という姿勢が理想です」 つまり足を組むのはバランスを保つための応急処置ってこと。その場しのぎでごまかし続けていると体によくないことも…。 「極端な例では、足を組み続けるとひざの外側にある腓骨(ひこつ)という骨の下を走る神経が圧迫されて麻痺する腓骨神経麻痺や、いつも同じ側の足を組む癖がつくと脊椎が左右どちらかに曲がる側彎症(そくわんしょう)になる可能性もあります。無意識にやっている人は要注意」