・地面に穴を掘るだけで政府が歳入を増やすことができる国では、自由は狭められ、教育予算は不足し、人間の発展が阻害される。
・石油資源が豊富な産油国では、原油価格と自由化の度合いが、逆の動きを示している。すなわち、世界の原油価格が上昇すると、言論の自由、政府の透明性、司法の独立、法の支配、独立した政党やNGOの結成が蝕まれる。こうしたマイナスの傾向は、原油価格が上昇すると、石油主義者の指導者が国際社会の評判を意に介さなくなることによって強まる。
・天然資源が豊富にあることが国の経済と政治に悪影響を及ぼす可能性は、昔からエコノミストたちも指摘していた。その現象は「オランダ病」や「資源の災禍」などと、さまざまに診断されていた。
・オランダ病は、天然資源がたなぼた式に手にはいって産業が衰退することを指す。1960年代に、北海の豊富な天然ガスを発見した直後のオランダがそうなって、その新語が生まれた。
・天然資源が発見されると、急に外貨が流入して通貨価値が上がる。通貨が上がると、外国のバイヤーにとってはその国の商品価格が高くなり、輸出向けの製品の競争力が落ちる。一方その国の国民は、外国製品を安く買えるようになる。金があり余っている国民は、外国の安い製品をがむしゃらに買い、国内の製造業は全滅して、国全体の産業が衰退する。