脳は贅沢(ぜいたく)な臓器です。重量は全体重のたかだか3%しかないのに、心臓から排出される血液量の20%を消費します。糖と酸素を含む
大量の血液を供給しないと、本来の知的能力や人格を表現してくれないのです。糖尿病で血液中に含まれる糖の量が不安定になると、脳はあっという間に活動で
きなくなるし、心臓病で十分な量の血液を送れなくなると脳は沈黙します。

 認知症が進行された方の経過をさかのぼってみると、心臓機能の低下が先行している場合も多く、心臓からの血液供給が不十分となって多発性脳梗塞が起こ
り、認知症が進行するという過程が分かります。脳のトラブルである認知症の原因が、脳以外にあることは決して少なくありません。

 ここで、感情のコントロールについて説明します。われわれは大脳皮質、とりわけ前頭葉を中心とする大脳皮質で感情にブレーキをかけています。「腹が立つ
けど辛抱しよう」「怖いけど勇気を出して耐えよう」「かわいそうだけど涙をこらえよう」といったときは、前頭葉を中心とする大脳皮質が活躍して感情にブ
レーキをかけています。

 そして、繊細な臓器である脳にダメージが加わった場合、脳の中で最初にギブアップしてしまうのが大脳皮質です。大脳皮質は進化的にみれば最も新しく登場
した新参者ですから、もろさが目立ちます。逆に、進化的に古い脳である感情脳はタフで、脳血流が少々低下したくらいではびくともしません。

 怒り、恐怖、哀れみなどを感じさせる感情脳が、大脳皮質よりもタフであるという点が重要です。すなわち、ダメージに弱い繊細な大脳皮質が傷つくと、タフ
な感情脳をコントロールできなくなります。感情にブレーキがかけられなくなって、涙もろくなったり、怒りっぽくなったりするのです。

 60歳以下という年齢で涙もろくなったのであれば、大脳皮質になんらかのトラブルが起き、感情のブレーキがかかりにくくなっている可能性があります。大
脳皮質トラブルの原因を幅広く検討しましょう。体力低下や全身状態の悪化があるのかどうか、心臓や肺の機能低下はないのか、もしくは脳の細い血管が詰まっ
ていないかなど、周囲が注意深く観察することで、大脳皮質トラブルの原因を発見できると思います。

脳の老化のシグナル – 徳島新聞社 (via niburn) (via cloudsunrain) (via omasayan) (via yashlu) (via petapeta) (via yaruo)
2010-08-23 (via gkojay) (via flatmountain) (via precall) (via ixa) (via currychef)
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