ロンドン五輪に参加する各国選手を歓迎するため、ロンドン市内のリージェント街で飾られた各国の国旗のうち、台湾の中華民国旗が外され、チャイニ―ズタイペイ旗(中華オリンピック委員会旗)に代えられたのは、中国の要求圧力を受けた英外務省からの要請によるものだった。

中国が台湾併呑を正当化するため「一つの中国」を掲げ、「二つの中国」「一つの中国、一つの台湾」を絶対に許さないため、「台湾」とも「中華民国」とも名乗れず、「チャイニ―ズタイペイ」(中国の台北)などと呼ばれる台湾代表だが、五輪会場外でまでこうした仕打ちを受けたことに、台湾世論は激怒した。

ところがその後、各国旗掲揚の当事者であるリージェント街協会は、台湾に対して謝罪したそうだ。

当然と言えば当然だが、私はその話を聞き、英国人は「何と立派なのだろう」と感心した。なぜかと言えば、日本人ならきっと謝らないからだ。

「チャイニーズタイペイとするIOCの規定に従っている」などとして、規則を盾に事勿れ主義に徹するような習性が、日本人には確かにある。

もう一つ、日本のメディアには真似できないような英国メディアのアクションも見られた。

五輪のテコンドーの試合で台湾選手が出場した際、テレビ中継を行うBBC(英国放送協会)の男性アナウンサーは「チャイニ―ズタイペイ」と紹介したのだが、それに続けて女性アナウンサーはこう解説した。

「かつての名はフォルモサ(英語の台湾呼称の一つ)。ポルトガル語で美しい島の意味だ。私もきっとそうなのだろうと思う。二千三百万人が暮らす国家で、彼らは自分たちの島を台湾と呼ぶのを好んでいる」

「フォルモサ」と呼び、「台湾」と呼び、そして「二千三百万人の国家」と称したのである。

それはすべて真実の報道だ。「一つの中国、一つの台湾」と言う否定できない現実をはっきりと国内外の視聴者に伝えたのである。

「チャイニーズタイペイ」なる名称の虚構を打ち破り、報道の「中立性」を看板にするBBCの意地を見せたかにも見える。

日本のメディアなら、口が裂けても「国家」などとは呼ばないはずだ。NHK(日本放送協会)などはとくにそうだと思われる。

もちろんこの一件でBBCが台湾人の喝采を浴びたのは言うまでもない。

BBCのニュースサイトにおける台湾紹介のページで中華民国旗を掲載していることも、これを機に台湾では大々的に報道されている。

私はそんな英国がうらやましい。誇りある日本人なら誰でも、「中国に叱られるのを恐れる日本」より「台湾から拍手喝采を浴びる日本」の方がいいと思うはずだ。

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