ロシアの民俗学者アファナーシエフが収集した、きわどい話が満載のロシア昔話集。どれもおおらかで猥雑で底抜けに面白いのですが、「うぐいすマラ」(pp290-291)(本当にこんなタイトルなんです)という話に民衆の知恵を見た、とあたしは思いました。

ストーリーを簡単に紹介すると、

  1. 昔々、マラがうぐいすのように美しい声でさえずるという特技を持つ若者がいた。
  2. 若者はある日、王様の宮殿の庭に忍び込み、マラをひっぱり出してさえずらせた。
  3. 王女が興味を持ち、「その小鳥を売ってくれ」と言う。
  4. 若者、「貴重なものだから売れない。王女の白い体の中から種を三べん食べさせないと、この小鳥は鳴かなくなる」と説明。
  5. 王女、自分の体から種を食べさせることを承知する。
  6. 若者、王女の裸のお腹の上に蒔いた種を「小鳥」に食べさせるふりをしつつ、割れ目の中に「小鳥」をもぐりこませてしまう。
  7. 王女「どうしてそこへ小鳥を入れたの」
  8. 若者「種がその中に一粒ころげこんだのです。もったいないじゃありませんか」
  9. 次の日から王女は「小鳥に餌をやる」行為に熱中。
  10. めでたく懐妊。(王女本人は『お腹にうぐいすが巣をつくった』と思って幸せそうにしている)
  11. 王さまは仕方なく王女を若者の妻に与えた。

で、何がすごいって、この話の結論(p291)がこれなんです。

人には生まれついてのきりょうも頭も必要ない、特技があればよいというお話。

わはははは何ですかこの身も蓋もないオチはー!! でも、この結論には確かに人生の真理があると思うんですよ。しかも、こんな大ボラ話の後でぽそっとこんなことを言われたら、真面目くさって「顔じゃないよ心だよ」だの「学歴なんて必要ない」だのと説教されるより、かえって納得してしまうってもんです。ロシアの人民の叡智、おそるべし。日本人も、しかつめらしい顔をして人生論だの自己啓発本だのを読むより、落語の艶笑譚でも聴いてニヤニヤアハハと笑ってた方がよっぽど得るものがあるんじゃないかなー、と思ったりしました。

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