3人の男が死んで、天国の入り口に着くと、門番の聖ペテロが3人に告げた。
「あなたがたの天国入りに先立って、移動に便利な乗り物を渡します。
 車の種類は、妻にどれくらい誠実であったかによって、判断することになっています。さて……」
 といって最初の男に質問をした。

「あなたは妻に誠実でしたか?」
「はい、誠実でした、ペテロ様」と答えて、さらに続けた。
「私は決して迷ったりしませんでした。結婚したその日から死ぬまで
 家内以外の女性と寝たことがありません。とっても愛していたんです」
「あなたの貞節に報いて、ロールス・ロイスのキーをあなたに与えます」

 その男が喜んでキーを受け取ると、聖ペテロは次の男に向かって訊ねた。
「あなたは妻に対してどうでしたか」
「はい、ペテロ様」とちょっと恥ずかしそうに答えた。「正直に申しますと、若いころ1~2度迷ったことがあります。
 けれども、妻をとても愛していたんです。だから、それ以後は死ぬまで誠意を貫き通しました」
 聖ペテロは男を見下ろしながら「よき夫であったことに報いて、ポンティアックのキーをあなたに与えましょう」と言ってキーを渡した。

 男がキーを受け取ると、聖ペテロは3番目の男に訊ねた。「あなたは妻に誠実でしたか」
「ペテロ様、私は機会がありさえすれば、何でもやっちゃいました。だから女房以外の女性と寝なかったためしは1週間たりともありません。
 けれどもペテロ様、正直に申します。女房をとても愛していましたので、いけないこととは思っていたんです」

「分かりました、奥さんを愛していたことを勘定に入れましょう。よってあなたにはこれをあげます」
 聖ペテロは10段変速ギアのついた自転車を与えた。

 天国の門が開いて、3人は中へ入った。その後あるとき、自転車をもらった男は、ロールス・ロイスを貰った男が車を道端に停め、
 バンパーに腰を下して、泣きじゃくっているところに行き会った。彼の横に自転車を止めて、聞いてみた。

「おい、どうしたんだ。何か具合の悪いことでもあったのか。きみは優雅なロールス・ロイスを乗り回せるじゃないか」
「そうなんだけどね」と男はすすり泣きながら言った。
「たった今、家内がローラースケートに乗っているところを見たんだ」

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