④責任
えーと、俺がUNIQLOを辞めようって思ったのはこれです。個人的にはこれが一番堪えられなかった。
会社の経営方針として「全員経営」ってのがあって、これは柳井の口癖でもあるんですけど、要するに全員が経営者の自覚をもって、もっと利益や売上にコミットしましょうってことなんだけど、それがどう転じてか、「責任は個人がとる。」ってことになって、それがさらにこじれて、「担当者(末端社員)が責任をとる。」ってのがUNIQLOのやり方。
おれはアパレルしかわからんので、アパレルの話をしますけど、モノ作りってのは基本トップダウンで行われる。
ディレクターって呼ばれる人達が(UNIQLOの場合大勢)いて、その人達がじゃぁ今季のコンセプトはこれこれですよってのを決める。
それを元にカラーを組む人や、柄を組む人や、デザインを考えるデザイナーがいて、サンプルを作って、会議をするわけです。
でもすぐにサンプルを作れるわけじゃなくて、何度もそのエライ人達と打ち合わせして、パタンナーと打ち合わせして、じゃぁこれでいこうってなったら、生産部と協力してサンプルを作って、会議に挑むわけです。UNIQLOの商品は全て社長が目を通すので、商品系の会議と言えば社長会議なんですけど、そこまでに「会議のための会議」を何度も重ねて、会議に挑むわけです。
そんで会議でたまたま柳井の意にそぐわなくて、「誰ですか!こんな下らないもん作ったのは!」ってなったとするでしょ?
首根っこ掴まれて、社長の前に放り出されるのは、一番下っ端のデザイナーだったりパタンナーだったりMDだったり生産なんです。
んで、ボーナスの査定が目減りする。上司はうまくそれを処理して昇給する。
おれはこれがどうしても納得できなかった。
責任の取れない上司なんて必要ないし、そもそもみんなで話して決めたじゃん!っていう。
1つ例を出します。
今飛ぶように売れてるウルトラライトダウン。あれ、初年度とサイズ感が違うんです。
当初のコンセプトだと、あれは「ミドルレイヤーとしてのダウン」だったんです。mont-bellさんやPatagoniaさんがやってるようなシャツダウン。アウターの中に着るダウン。
そういうコンセプトですから当然サイズ感は、「シャツのよう」にミドルレイヤーとしてのフィット感を重視したサイズ感だった。
ところが、これが販売を開始してみると、店舗から「従来のものよりサイズが小さいのではないか」いう問い合わせが頻出したんです。
これ自体はよくある話です。誰が悪いというわけでもない。
きちんと商品説明が店舗まで行き渡っていなかったのも悪い。お客様に説明できていなかったのも悪い。そもそもそういうコンセプトが受け入れられる土壌がUNIQLOの客層にはできていなかった。いろいろ悪かったんです。
でも、これは責任をだれかがとらなくてはならない。何故なら!それが!UNIQLOの!やり方!ヒャッハー!魔女狩りだゼェ!
でも当然商品化されるまでには、何十人もの人間が携わり、会議で議論し、社長自身が「それで行きましょう!」と判を押してる。
そういうの全部無視して、企画立案者に罪をなすりつけるような会社で、良いアイデアや、良い商品が産まれるわけがない。
みんな萎縮して、実績のあるものをこねくり回すだけの仕事になっちゃう。
おれは絶対間違ってると思う。ねぇお兄ちゃん、これが全員経営ってやつなん?これがドラッカーがめざした理想の経営学なん?
こういうことが日常的に起こる会社にいると社員はどうなると思いますか?社員は常に怯えて仕事するようになるんです。
自分が責任をとらないでいいようなやり方。共有のメール、共有のための会議。会議、会議、会議、メール、メール、メール、メール。。。