アパレルブランドのJ.クルーは20億ドル(約2128億円)近い負債を抱え、ブランドとしての名声を失っていた。傘下のデニムブランドであるメイドウェル(Madewell)は希望の光だったが、経済が良好な時期でさえ、同社は経営を正しく舵取りできなかったのである。
2013年には23億ドル(約2447億円)あったJ.クルーの売上は、2019年には18億ドル(約1915億円)にまで減少する一方、負債は17億ドル(約1809億円)に達していた。同じ時期、メイドウェルの売上は毎年6億ドル(約638億円)以上に増えてJ.クルーの3分の1近い規模となり、非常に大きな成長の可能性を秘めていた。
メイドウェルがしばらくのあいだ際立った成功を収めていたため、J.クルーはメイドウェルを公開会社として独立させ、自社を非公開会社として存続させる計画を立てていた。その狙いは、メイドウェルの成功に乗じて、増え続けるJ.クルーの負債の一部を返済することにあった。だが、メイドウェルのIPOは、2019年9月~今年の2月と今年の2月~3月の2回にわたって延期されたあげく、投資家の確信が得られずに頓挫することとなった。
メイドウェルとJ.クルーの成功を妨げた最大の要因は、膨大な額の負債だ。2019年末の時点で、J.クルーの銀行口座には2600万ドル(約27億6650万円)しか残っていなかったが、負債は20億ドル近くに上っていた。
「メイドウェルの収益は大部分がeコマースによるものだが、J.クルーは実店舗の営業停止によって立ち行かなくなるほど、来店客への依存度が高かった。いまではメイドウェルのほうがJ.クルーよりはるかに重要なブランドだ。(J.クルーの)買収や債務者との再交渉が行われるなら、現時点ではメイドウェルが唯一の交渉材料となる」。
「勝利を収めるのは、eコマースブランドとデジタルネイティブブランドだ」