戸田さんの翻訳批判の中には、原作を無視して大幅に訳しているという声もある。言葉の意味やニュアンスをくみ取る意訳、そして誤訳の境目はどこなのだろうか。
戸田さんは “Goodbye” という言葉を例に挙げて説明する。
「アメリカのサラリーマン家庭があって、お父さんが “Goodbye” と言って家を出て行く」
「『さよなら』って訳したら、日本人にはお父さんが家出するみたいに思えます。日本では『いってきます』と訳さねばならない。原文と違うけど、それは誤訳ですか?」
「これは、極端な例です。しかし、実際のセリフにはもっと微妙なレベルで、制約上、同じような意訳をせねばならない場合が数多くあります」