「衛生仮説」のほうが一般的だろう。1990年代初頭に英国の疫学者、デイヴィッド・ストラカンが最初に提唱したこの仮説では、ぜんそく、糖尿病、アレルギーなどの過剰な免疫反応に関連する慢性疾患の増加は、子どもの生育環境の無菌化が進んでいることが原因だと考える。

免疫システムとは、突き詰めれば物体の分類装置であり、自己と非自己を識別することが免疫システムの役割だ。子どものころに遭遇した微生物は、この識別プロセスの最初の指導的役割を果たし、発達中の免疫システムが危険なものとそうでないものを解読するのを助ける。

抗菌せっけんや抗菌ジェルを使用し、高層アパートに閉じ込もり、コンクリートジャングルをクルマで移動する家庭が増えるほど、細菌、原生動物、菌類、ウイルスが繁殖する生息地は少なくなり、子どもの発達中の免疫システムがそれらに遭遇する可能性は低くなる。細菌などへの曝露が少ないということは、訓練の機会が少ないということだ。充分に訓練されていない免疫システムは、体内の細胞と食物アレルゲン、腸内微生物、または空気中の花粉を区別できない可能性がある。

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