「CRISPR」という言葉は、細菌や古細菌などの微生物がもつある特殊なDNA配列を指すものだ。微生物の多くは、自分自身に感染したウイルスのDNAをバラバラに切断するシステムをもつ。さらに、こうしてできた多数のDNA断片を微生物自身のゲノムに取り込むことで、感染したウイルスのDNA情報を蓄えておくことができる。
こうして取り込まれた多数のDNA断片がCRISPRの正体だ。そして、もう一度同じウイルスが感染したとき、微生物はCRISPRをもとに、ウイルスDNAに結合する「ガイド」RNAをつくりだす。このガイドRNAが、Cas9というタンパク質とともに働くことで、微生物はウイルスDNAを切断し、排除することができる。つまりCRISPRは、微生物にとって免疫システムの一部として機能している。