「そもそもなんで音楽だったんですか?」と。父親は編集者で、母親は帽子デザイナーだった。社会科学から人類学、科学にまで広がる坂本の広い見識から、ほかにも選ぶことができたであろう多数の表現方法のなかから、音楽を選びとった理由を知りたかった。「その答えははっきりあって、交通事故のようにYMOが売れちゃったからです。そんなつもりなくYMOに参加したのに、急に有名になっちゃって、自分としてもミュージシャンだと認めざるをえないってことになったんです。それまでは、何にもなりたくないというか、職業を限定されるのが嫌だと思っていた。小学校の低学年の頃から、なりたい職業を聞かれると『ない』って答えてました。何かに所属するのが嫌だったんでしょうね」