父のラーメンは「家系」と呼ばれるとんこつしょうゆ味で、脂の量も調節してくれます。味付け卵やチャーシューも手が込んでいます。父のラーメンが一番好きです。父は研究熱心で、店で出すキムチの勉強をするため、本場の韓国まで行ったことも。私が十歳前後のころだったでしょうか。その後も十年おきぐらいに、一流とされるラーメン店に弟子入りのような形で修業に出て、家をしばらく空けることがありました。
年を重ねると、誰しも自分の世界を守りたいと思うもの。自分から一歩踏み出し、他の人に教えを請うのは大変な決意が必要だと思います。でも、父は時代の変化に対応するにはプライドを捨て、自分が変わらなければならない、と考えたのではないでしょうか。
将棋にも共通する部分があります。今の将棋界は強い方がたくさんいて、後輩から学ぶことも多くあります。父から何か言われたことはありませんが、謙虚な気持ちを忘れず、他の人から学ぼうとする父の姿は、間違いなく、私の人生の糧になっています。