岡本氏はぜんぜん違った。髪型やファッションは少しふざけているようにも見えたけれど。私が知るかぎりで言うなら、あれほど丁寧で真面目な仕事をする人は滅多にいなかったし、呆れるぐらいの紳士で、いつも弱い立場の人たちを大事にしていた。生きるのが下手な人の味方だった。たとえばコミュニケーションが得意ではない技術職の人や、自分の権利を主張できない人。あるいは私のようにどうしても請求書が書けないという理由でうっかりタダ働きしてしまうバカに、とことん親切だった。そして「そういう人たちの成果を横取りする能力」に長けた華々しい人たちの行動を見逃さなかった。世渡り上手で中身が空っぽの人たちを嫌っていた。「影響力のある有名人に媚びて、弱そうな連中を鼻で笑うタイプ」の対極にいるような人だった。