自分にとって最初の映画音楽は『戦場のメリークリスマス』で、あれはほぼ100パーセント近くシンセでつくった作品なんですが、あのままヴァンゲリスみたいにずっとシンセで映画音楽をつくり続けていくこともできたかもしれません。そのほうが普段やってることと同じでやりやすいし、弾いちゃったほうが早いし、譜面を書くのも本当は嫌いです。
実は『ラストエンペラー』のときも、ベルトルッチ[編註:映画監督のベルナルド・ベルトルッチ]の前にシンセとサンプラーを並べて「こんな感じでどうですか?」って実演したんですよ。そうしたら、「演奏者の衣ずれの音がしない」「演奏者の椅子のギシギシという音もしない」って言われて、「これは困ったな……」って(笑)。それでしょうがないから渋々、生でやったわけですけど、それによって、そのやり方が定着しちゃった面も大きいんですよね。