その農家さんがおっしゃるには、料理人はなにかと言えばすぐに農家と契約をしたがる。農家と契約すれば、いい野菜を安くに手にできると思っているからです。でも、自分たち農家は、野菜を作っているんじゃない。いい土を作っているのだ、とおっしゃいます。いい土に種を撒けば、神様がいいものを恵んでくださる。農家は、その管理をしているだけ。そして、どんなにいい仕事をしても、時には台風の被害にあったり、獣に作物を荒らされたりして、思いのままに収穫を得られないこともある。それなのに、料理人はできのいい野菜だけを買っていき、未熟な野菜には見向きもしない。
畑には、いい出来のものもあれば、同じように出来の悪いものがあって当然なわけですから、自分の畑の野菜が欲しければ全部持って行けとおっしゃいます。品質にバラツキがあって当然の自然の恵みである食材を、1つも無駄にすることなく、いかに良さを引き出すのかが、料理人の腕だろうというお話でした。