ルセットとは、調合(レシピ)のことですが、お菓子は科学と言われるぐらい、決められた配合、決められた作り方があって、「決められたことを決められたように再現するというのがお菓子作りである」という考え方がベースにあります。

目分量ではなく、きっちりと量り、きっちりと決められた手順で作ることが良しとされます。
そこに、アラン・シャペル氏の「ルセットを超えるもの」という料理哲学が、私の中で融合しました。
お菓子作りで絶対視されているルセット。それを超えるためにはどうするのか。その思考です。

シャペル氏からは「その基本から抜け出せなければルセットを超えることはできない」と、ほんとうによく言われました。「脱出しろ」と。
シャペル氏に出会わなければ、いまもルセットをなぞるだけの菓子職人であったと思います。

調理はお客様に満足していただく物語の一部でしかありません。
そもそも誰のために作るのか。その人のためにどういった食材がいいか、どのようにして良い素材を手にするのか。「誰」というのをとにかく意識しろと。

なぜかというと、ミオネの「アラン・シャペル」本店には、世界のグルメが集まってくるからです。毎日世界中のVIPがひっきりなしに来るんです。
想像できますか?すごかったですよ、来店する車も高級車ばかりですし、映画俳優から、ピカソの娘さんまで幅広い方が来られましたからね。

ですから、決まったものを作るだけではいけない。毎日、この方々のために何を作るのかというテーマを要求され続けます。

ルセット(レシピ)を与えられるわけではないので、最大限イメージを膨らませて想像し、自分で構築しなければいけません。
その時にシャペル氏が、この時期にはこういう食材がある、過去にこんな美味しいものを食べた…そうやって色んな思い出を私に話し、私のイメージを最大限広げることを手伝ってくれました。

日々、頭がパンクするんじゃないかというぐらいお菓子を頭の中で創造していましたね。夢でもお菓子作りをしている、それくらい追い込まれながらやっていました。

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