10代や20代のときに、なにか大失敗をしたり
競争に負けたりすると、その経験が、
心に深い傷をもたらすことがあります。
私は、アメリカの大学の法学部を出たんですが、
「最高裁の法務事務官になる」というのが
非常に名誉なことで、
学生にとっては超一流の就職先なんですね。
最高裁判事は9名いて、
それぞれ4名ずつ法務事務官を選びます。
法務事務官の任期は1年。
判事は8人の候補者と面接します。
私は2人の最高裁判事と
面接するところまで行って、
きっと受かるだろうと思っていたんですが、
両方とも最後の面接で落ちてしまいました。
そのとき25歳でしたが、
もう私にとってはたいへんな悲劇で、
この世の終わりかと思うくらい打ちのめされました。
まぁ、見方によっては、そんなことで
打ちのめされるなんておかしいんじゃないか、
とも言えるのですが、実際、私の心の中では、
そこでの競争に負けてしまったことが
大きなトラウマになってしまったわけです。
私の古い友人で、そういった過程を
すべて知っている人がいるんですが、
その面接に落ちてから10年が経って、
私がPayPalである程度
成功を収めているころに会ったとき、
その友人は「久しぶり!」という挨拶も抜きに、
「ピーター、あの最高裁の法務事務官の
面接に落ちて、よかったと思わない?」
と言ったんです。