我々のほぼ全員が持っているバイアスについて説明している。今日の自分は、この先もいまのまま変わらないと考える傾向が我々にはあるというのだ。
いまの自分は10年前の自分と同じかと聞かれると、ほとんどの人が違うと答える。だが一方で、将来自分が変わる可能性については、なかなか考えられない。心理学で「歴史の終わり幻想(end of history illusion)」と呼ばれるものだ。
過去の自分は、明らかにいまの自分とは違うと認識しているにもかかわらず、いまの自分が「本物」の「完成版」であり、未来の自分は基本的にいまと変わらないと考えがちだ。ギルバートは、簡潔にこう言い表している。「人間は、自分を完成品と誤解している制作中の未完成品である」