”そうなんだよ、大変だったよ。横尾さんと会ったら、細野くん、君はどんな楽器が得意ですかって訊ねられてね。だから、いちばん得意なのはベースで、弦楽器ならだいたいOKで、打楽器でも大丈夫ですと答えたんだ。そうしたら今度は、じゃあ、いちばん苦手な楽器は何ですか?と訊かれたんだ。で、キーボードですね。見ているだけで、体調がおかしくなると言ったんだよね”

その話を聞いた横尾忠則は、それならオール・キーボードでアルバムを作ろう、そうしたらジャケットもプロデュースも引き受けると言った。きっと、芸術家を追い込むと何かとんでもないものが生まれると横尾忠則は考えていたのだと思う。

“参ったなと思ったけど、横尾さんと仕事できるなら、いいかなと考えて、オール・キーボードで初めて作ったんだな、これが。大変なんてもんじゃなかった。横尾さんと一緒にインドへ行ったんだけど、水や食べ物が合わないのか、ずっと下痢状態。いざ、キーボードに向かってみたら、今度はストレスで下痢。完成したのが不思議なくらいだよ”

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