吸虫の一種は、海洋性の巻き貝の体内で誕生する。孵化した幼生たちは、次の宿主となる小魚を探す。
魚を見つけた吸虫はえらに取りつき、そこから脳に向かう。しかし、最終的な目的地はそこではない。
吸虫が繁殖できるのは、水鳥の内臓の中だ。そのため、魚の脳内で化学物質を放出し、奇妙な泳ぎ方をさせたり、飛び跳ねさせたりする。
この寄生虫が魚の脳内でセロトニンを減少させ、ドーパミンのレベルを上げていることを突き止めた。この脳内化学物質のおかげで、魚は激しい泳ぎ方をするようになる(セロトニンもドーパミンも神経伝達物質)。
泳ぎ方が慌ただしければ、それだけ魚は目につきやすくなり、鳥に食べられる可能性が高い。もちろん、吸虫も一緒に鳥に食べられる。鳥の体内で吸虫は繁殖し、鳥の糞とともに排出された卵は、巻き貝に食べられ、やがて魚に……。後は、この繰り返しだ。