この世にはハンバーガーを「少しでも安く食べたい」という客層と、「ハンバーガー程度なら価格は気にしない」客層が混在している。前者の例は、節約志向のファミリー層などで、後者の例は、会社帰りの懐に余裕のある独身ビジネスパーソンなどだろうか。したがってファーストフード店は客それぞれに違った価格を提示できればいいのだが、顧客それぞれの「ハンバーガーへの価格意識」は当人にしかわからない私的情報だから、それは不可能だ。
しかし、クーポンを使うとこの情報の非対称性はいっきに解消できる。なぜなら、価格に敏感なファミリー層は普段から新聞折り込みやアプリでのクーポン情報をマメにチェックしていて、それを持って食べに来るからだ。言うなれば、顧客が勝手に自分でクーポン払いという「値下げ」をしているのと同じだ。他方で仕事帰りの独身ビジネスパーソンは、クーポンなど気にせずにそのままの価格でハンバーガーを食べるだろう。これは、顧客の方が「高い価格」をみずから選んでいるようなものだ。