(孟嘗君が秦に)着くと、昭王は引き止めて、捕らえて孟嘗君を殺そうとした。
孟嘗君は、昭王のお気に入りの婦人のところへ人をやって助けてもらうよう頼んだ。
婦人はこう言った。
「あなたの持っている狐白裘(こはくきゅう=狐の脇の下にある白い毛で作った衣服)をいただけたら(助けて差し上げたい)と思います。」
(ところが、そもそも)孟嘗君は(狐白裘を)すでに昭王に献上してしまい、他に狐白裘を持ち合わせていない。
(困ったところ、孟嘗君と同行している)食客の中にコソ泥の上手な者がいた。
(彼は)秦の蔵に忍び込み、狐白裘を盗み出し婦人に献上した。
婦人は(孟嘗君のために)取りなして(孟嘗君は)許されることができた。
すぐに馬で逃げ去り、姓名を変えて、夜半に函谷関(かんこくかん)に着いた。
関所の規則では、(夜が明けて)鶏が鳴いたそのときに、旅人を通すことになっていた。
(孟嘗君は)秦王が後になって(自分を許したことを)後悔し、自分を追ってくることを恐れた。
(困っていると、孟嘗君一行の)食客の中に鶏の鳴き声が上手な者がいた。
(彼が鶏の声をまねて鳴くと、周囲の)鶏は皆鳴き出した。
そこで(関所の役人は孟嘗君一行の)車を通した。
(関所を)出ると間もなく、思ったとおり追っ手がやってきたが、間に合わなかった。