二月二十七日、都内では台湾二二八時局講演会が行われた。これは台湾で一九四七年に発生した、中国軍(蒋介石軍)による二・二八住民大虐殺を記念し、毎年都内で行われているもの。今年も在日台湾人や台湾を支持する日本人の識者らが、拡大一方の中国の軍事的脅威の前で、日本と台湾はいかにあるべきかに関するスピーチを行ったが、ここでは特に川村研究所代表で元海将補である川村純彦氏による話を取り上げたい。なぜなら全国民が聞いておくべき重要な内容だからだ。
それは、二月初めにインドで開催された国際シーレーン会議での話だった。
会議には日本、米国、インド、東南アジア諸国、オーストラリア、韓国、そして台湾など、利益を共有する国々の代表が出席し、中国の影響力拡大を抑止し、対処するかが話し合われた。
そのときの日本代表が川村氏なのである。「そうした会議が開かれるような時代になったのだ」と言っていた。
会場ではインドなど各国が、中国の海洋進出への警戒感が露にしていたそうだ。東南アジア諸国も、これまでとは「ガラッと変わった」ほど強い警戒感を示したという。
なにしろ東南アジア諸国はこれまで、中国に対して「善意」を以って交渉を続けてきたものの、南支那海はいつのまにか「中国の海」になってしまったからだ。
ところが各国の代表は、そこまで中国を警戒しながらも、大切なことに思い至っていなかったらしい。すなわち対中抑止には欠かすことのできない戦略上の位置を占める台湾の重要性をわかっていなかったというのだ。
そこで川村氏がそれを説明した。
———中国が太平洋に出るのを抑える位置にあるのが台湾。南支那海でも北で抑えている。
———もし台湾が我々の側ではなければ、中国は太平洋、南支那海へどんどん進出していることだろう」と。
次のような話もしたそうだ。
———中国の海洋進出は資源(海底資源、漁業資源)のためだけではなく、もっと大きな戦略があるためだ。それは米国と肩を並べる大国になることだ。
——— 中国は今は核戦力で劣っているから、米国のいうことを聞かなくてはならない。核ミサイルは二千基位で、全部が陸上配備。そのため最初に攻撃を受けただけで報復ができなくなる。そこで米国と肩を並べるには、南支那海でミサイルを発射できる潜水艦を配備しなければならない。
———米国の潜水艦が入れないような「南支那海聖域化」を必要としている。そうなればお互い核を使えなくなる。
———これで米国の対中抑止力は低下し、中国は普通の軍事力で「悪さ」をし始める。
———核の傘が弱くなれば、日本も中国を抑止できなくなり、頭を下げることとなる。
———だから台湾には南支那海の北でしっかり蓋をしていてほしい。
かくして各国の代表たちの間からは、「台湾の大切さはわかった」「一緒になって台湾を守ろう」との声が上がったそうだ。
—- (中略) —-
———中国は台湾をとるために、東支那海も絶対に自分のものにしなければならない。そしてその足がかりとなるのが尖閣諸島だ。
———中国は必ず尖閣をとりに来る。日本はそれを認識した上で、対処すべきだ。
川村氏はこう述べた上で、台湾の代表に対しても「このことを認識して頑張ってほしい。またこのことを持ち帰ってほしい」と呼びかけ、激励したそうだ。