かつて、擬態ではモデルと擬態者が同じ生息場所にいないと成立しないといわれていた。したがって、生息している地域でしか効果が無いと考えられていた。
ロッキー山脈には似た色彩と斑紋を持つチョウが見つかった。似ているが異なる科に属していてるので、近縁種だから似ているのではなく、何か共通のモデルに擬態していると考えられる。これらのチョウの幼虫が有毒物質を持っていないからだ。しかし、この地域に分布しているチョウからは、彼らのモデルとなったチョウは見つかっていない。これではモデル無き擬態になってしまう。ところが、赤道付近にこれらのチョウとよく似た色彩と斑紋を持つ有毒なチョウがいた。このチョウの捕食者の渡り鳥はここでのチョウを食べるとまずいと学習していてたら、ロッキー山脈のチョウにも十分防衛効果を持つ。ここに住むチョウ達はこの渡り鳥の学習を利用して、遠く離れた有毒なチョウを真似る事で捕食を免れていた。この様に遠く離れている生き物の色彩、斑紋を持つ事もある。『動物の体色』 日高敏隆 著 1983 東京大学出版 P56