1989年に最初の100型と呼ばれる新幹線が発明された際には、その騒音が問題となっていた。
特にトンネルから脱出する際、俗に「トンネルドン」と呼ばれるトンネル微気圧波が発生する。高速で空気を押しやるために風の壁が作られ、砲音のような騒音が発生する。この騒音は400m先まで届いていた。また、風の抵抗で車体が減速するのでエネルギーも無駄になる。
そんな課題を抱えていた新幹線だったが、エンジニアの中津英治氏が、自身の趣味であったバードウォッチングを通じて、いくつかの鳥の造形的特徴からヒントを得て、デザインを改善した。
まず、空気抵抗を減らすために、カワセミの丸みを帯びたくちばしを参考にした。カワセミの流線型のくちばしは先端が尖っているために、水しぶきを上げずとも川の中にダイブできる。水がくちばしに沿って後ろへ流れることで、衝撃が減少する。
また、電車が架線から電気を採り入れるため屋根に設置されているパンタグラフには、静かに飛ぶことのできるフクロウの羽の形状と、スムーズに水の中を泳ぐペンギンのお腹の部分の形状を採用し、抵抗を少なくすることで、騒音を減らすことに成功した。
これにより、新しいモデルの新幹線では、従来のものより速度が10%上がり、消費電力を15%下げ、騒音を70dBに抑えることに成功した。鳥の造形から学ぶことで、現在の新幹線はエネルギーをロスすることなく時速300キロで疾走できるようになった。