既存ホームページでは、ホテル、貸し別荘、移動手段について多数の選択肢を表示していた。これに対し新しいレイアウトでは、旅の目的地、日付、人数を入力させる小さなウインドーと、「宿」「フライト」「レンタカー」というシンプルな3つの選択肢だけを表示する。ブッキング・ドットコムが長い年月をかけて最適化してきたあらゆるデザイン要素──写真、テキスト、ボタン、メッセージなど──を全部取り払うという提案だ。
当時同社のCEOだったギリアン・タンズは、この実験に懐疑的だった。ホームページの変更によって、ロイヤルティの高い顧客たちの間に混乱が生じることを心配したのだ。同社の中核実験チームを率いていたルーカス・フェルメールは、そのテストが「大失敗(タンク)」に終わることに、シャンパンのボトルを賭けた。彼は、同社の重要な業績指標である顧客コンバージョン、つまりウェブサイト訪問者が予約を実行する件数が低下すると予想したのだ。
なぜ同社の経営陣は提案を却下しなかったのだろうか。それは、同社に所属する者は誰でも、経営陣の許可を得ることなく、何でも試すことができるという、ブッキング・ドットコムの基本理念の一つに反するからだ。