SARSの重症例では、まずウイルスが患者の肺で急速に増殖し、発熱とせきの初期症状が出る。約1週間後に免疫系が働き出すと、自然に回復する。
しかし、そのあと病気の第2ステージが始まり、症状は第1ステージよりもはるかに悪化する。香港大学の研究者が75人のSARS患者に焦点を当てた研究では、多くの患者を死に至らしめた第2ステージは、ウイルスが原因ではなく、患者の免疫系の暴走が原因だったことが明らかになっている。
特に高齢者や病気を抱える一部の患者は、何らかの理由で炎症反応を止めることができず、免疫細胞と炎症誘発分子「サイトカイン」が肺に大放出された。このいわゆる「サイトカインストーム」が、肺炎、呼吸困難、臓器障害など、SARSの最も重い症状を引き起こした。
「このサイトカインは免疫系によるウイルスの排除を助けるものですが、重い症状が出た患者では過剰反応を起こし、ウイルス自体よりも多くのダメージを引き起こしました」